ケンムンが山仕事の手伝いをしてくれた話

霜月入れば深山に入って、毎日、日が暮れるまで山工をしている男がいました。山工というのは山の中で材木を伐り、それを柱や板などに加工することです。

ある日、たまたま雨が小降りになり、日が暮れてきて暗くなったので、たき火をして木を削っていたそうです。すると何か人の話し声のようなのが聞こえ、うしろをふりむくと、五、六匹の頭をひざで隠した何かが、火のまわりに座っていたそうです。男はそんな話をよく聞いていたものだから、ケンムンだとすぐに思い、後手(コショデ、忌み嫌われる方法)で、木切れを二、三回投げましたが、立ち去りません。男は、立ち去らないのは、ひもじいのではないかと思って、弁当の残りをやったそうです。そしてケンムンはそれを喜んで食べていなくなったそうです。

そしてあくる日、山工の続きをして、仕上がった柱を担ごうとしたけど、重くてどうしても一人では担ぐことができず、なんとか方法はないかと思っていた時、昨夜のケンムンが来てくれて、材木の片方を持ち上げてくれたそうです。重い木材がうそのように軽くなり、山奥から道まで軽々と出すことができたそうです。

それ以来、男とケンムンは友達となり、山仕事の手伝いをしたり、木材をおろす時には必ず応援に来てくれたそうです。

奄美の民話 ケンムン話特集より引用)

ケンムンはいたずら好きで人間を山道で迷わせたり、食べ物を盗んで困らせたという話が残る一方で、山仕事や漁などを手伝ってくれたという話が数多く残っています。また、カノエサル(庚申)の日には、ケンムンがよく出没するといわれ山仕事をしてはいけないと言われています。

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